本投稿は、2011年10月6日のfacebookノートを転記しています。

スティーブ ジョブスが亡くなった。

御手本にしようとする事すらおこがましいと思わされる、まさしくレジェンダリーな生きざま、死にざまだった。

私にとっては、Appleのプロダクトよりもむしろ、経営者、人間としてのジョブスの存在のほうが特別だった。

だから、追悼の想いも込めつつ、自分の記憶のためにも、少ししたためておきたい。

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ジョブスがAppleを、ヴォズニアックとともに創業したのは、21歳の時だった。

ちなみにその1年前に、ゲイツは20歳で、ポールアレンとともにMicrosoftを創業している。

昨今では、ITにおける創業は、「若者による」、「共同創業」が、成功の王道のように言われている。

私自身も投資候補先に対してや講演などで、その事を偉そうに語っている。

でも、この「常識」について、もしジョブス達が今日のような偉大な業績をおさめる事が無かったなら、その学びを私たちが得ることは無かったか、少なくともずっと遅れていたのではなかろうか。

そしてジョブスは、

創業から35年という驚異的スピードで、世界の頂点を取った。

ITだけではない、全産業、全世界のなかの一番を取ったのだ。

時価総額トップ企業だ。それは、言うまでも無く経済的に換算できる概念上で世界最上位という事だ。

しかしAppleはそれだけはない、非経済的な価値においても、偉大な業績をおさめる企業なのだ。

その事について、私は1カ月ちょっと前に、こんな事を書いた。

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Appleは、Microsoftやインテルなどとは決定的に違う。

経営の手法や企業の文化が違う。

Appleは感動や体験に基づき、MSやインテルは戦略や理論に基づくと思う。

ゲイツやグローブが、バルマーやバレットにバトンを渡した後も粛々とプラットフォーム戦略で覇権が継続できた、そんなタイプの企業ではないと思う。

Appleの価値の源泉は言うまでも無く 「狂おしいほど素晴らしいプロダクト」であり、

それは圧倒的カリスマであり、細部に至るまで異常とすら言える執着を見せるデザイナであり、部下をどつきまわす鬼軍曹である一人の経営者により生み出された。

「オペレーションの天才」にバトンを渡したAppleが合議で、それを受け継ぎ得るとは思い難い。

そのため残念ながら徐々にプロダクトは凡庸化していき、よって少なくとも売上の成長カーブは減退するだろうし、利益率については「確実に」漸減していくだろうと思う。

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残念ながら、iPhone4sの市場評価によって、早くも上記の懸念は現実味を帯びつつある。

ところで、iPhone4sの”4s” には、”for Steve” の意味が込められているとは、たとえ噂話であったにせよ、なんとも泣かせる話ではないか。

実は私は、彼は56歳の若さで無くなったものの、普通の人だったらもっと、ずっと早くに亡くなっていたに違いない、と思っている。

もちろんそれは世界最高レベルの医療を受けていた事もあるのだろうが、それはもっぱら彼の執念によるものに違いない、と思っている。

そうでなければ、世界の頂点を見届けた直後に会社トップを去り、そしてその1カ月後に亡くなる、そんな事があり得るだろうか。

きっと歯を食いしばって、ガンの痛みと苦しみに文字通り血の汗と涙を流しながら、懸命にゴールにたどり着くまで命を繋ぎ止めたのではなかろうか。尋常ならざる、狂気にも近い精神力をもってして。

大成功とは、血の汗と涙を流す程の執念によって成し遂げられるものである、

それが、自らの死にざまでもってして我々に遺してくれた、彼の大いなる遺産ではなかろうか。

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スタンフォード大学の卒業式でジョブスが行ったスピーチは、あまりにも有名だ。

私にとっても、それは教科書であり、同時に映画のようでもあり、何度も何度も好んで見ている。

そこには私にとって珠玉の言霊が沢山ちりばめられている。

その中のひとつ

you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.

「Dots」、つまり点というのは、人生におけるワンシーン、ワンシーンの比喩だ。

例えば、いま従事している仕事や学業、それだけでなく日々起きる良い事、嫌な事、偶然と思える事など、全ての事だろう。

「それらの点は、将来を見渡して線としてつながっていくものではない。後になって振り返ってみて初めて、つながって見えるものだ。 だからあなた達も将来、点がつながる(今やっている事が意味を成す)と信じるべきだ。」

また彼はスピーチで、成功した事よりもむしろ、失敗や挫折について、Appleを追い出された時の事すらも、率直に語っている。

「人生には時々、レンガで頭を叩かれる程のひどい仕打ちもあるものだ」

そのうえでの、「Dots will connect」だ。

私はこのスピーチに本当に助けられた。

過去に、仕事において、本当にとても辛く厳しい局面があった。

その時、彼のこのスピーチは、私を励ましてくれ、なんとかまた歩き出すことが出来た。

だから彼は、私にとって特別なのだ。

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もう一つ、ジョブスについて私には特別な想い出がある。

10数年前、私がシリコンバレーの友人を訪れた際、友人はジョブスの自宅を案内してくれた。

もちろんジョブスとは知り合いでも何でもない。ただ外から家を見ただけの話だ。

しかしその時、窓の中でカーテン越しに、ほんの一瞬だけチラリと人影が動いた。

それを見た我々は、「あれはジョブスだ、そうだ、そうに違いない、そういう事にしよう!絶対そうだ!」と言って舞い上がった事を覚えている。

そのとき私は、将来の起業に向け会社を辞める時期だったこともあり、特別に興奮していた事もあったため、その光景は宝物のように今でもずっと焼き付いている。

「今見たあの男に、いつか今よりも、ほんの少しでも近付こう」そんな思いを抱いたものだった。

ところでその家の庭にはちゃんと、リンゴの木が植えてあった。

ジョブスとは、そういう人なのだ。

語るとキリが無い。それもまた彼への愛着がなせる事なのだろうが、そろそろ終わりとしよう。

ありがとう、スティーブ ジョブス。

安らかにお眠りください。