なぜ日本でオール英語のイベントが少ないかを考えると見えてくること

Rebright Partners Pte Ltd.

先週はジャカルタで、再来週はデリーでスタートアップイベントに参加する。

よく何語でやってるんですか、と聞かれることがあるがすべてオール英語のイベントだ。

ちなみに先週は東京でスタートアップイベントに登壇したが、主催者側から日本語で話をしてくださいと言われた。久々に母国語だったのでたいそう話しやすかったが。

アジア諸国でなぜしょっちゅう、外国人投資家が集まるオール英語のスタートアップイベントがあって、日本であまり無いかという事を考えてみたのだが、理由は単純明快だ。

単に彼らがそこにいるか、いないかの違いである。

もっとわかりやすく言うと、日本に住んでいる外国人キャピタリストの数と、アジア諸国に住んでいるそれとの差である。

前者はほぼ皆無に等しく、後者は業界内では石を投げれば当たる、というほど沢山いる。

(専門外の事はよく分からないがこれはテック業界に限らず日本全般にいえるのではないか)

ではその理由は何かと言えば、アジア諸国は日本に比べて

1.国内のVCマネー供給量が少ない
2.マクロで市場が伸びている

この2点がこの話の根本にある。

例えばインドネシアの国内VCは財閥系を中心に出ては来ているが量が圧倒的に不足している。正確な統計はあまり無いが体感でおそらく数十億円前半あるかないかといったところではないか。その土地のVCマネーの量というものは、だいたいそのスタートアップエコシステムの成熟度(歴史の長さ)による。インドネシアはまだそれが始まって数年しかたっていない。だから少ない。
では資金供給の担い手は誰かというと、専らシンガポールと日本のマネーである。加えて米国と中国がレイトステージやストラテジック系で存在感を増しつつある。

つまり、東南アジアには、外国人投資家をわざわざカンファレンスのためにご招待などしなくとも、すでにそこにたくさん生息しているのである。コミュニティの一員なのだ。私がしょっちゅう協調投資をしたり会合などで顔を合わせるキャピタリストだけでもドイツ人もロシア人も米国人も英国人もオーストラリア人もいる。彼らはわざわざそこに移住して、アジアで商売している。

インドはそこまで外国人キャピタリストは多くないものの、米国トップティアVCがひしめいておりセコイアもアクセルも現地に100人近くの社員を擁する。また米国在住や元在住のインド人ハイレベル人材がエンジェル投資やLP投資(VCファンドへの投資)をバンバンしているし、そもそも優秀な労働力の国際的な行き来が活発であるため、米国との境目はお国柄として無いに等しい。

対して日本は真逆だ。
日本に住んでいる外国人キャピタリストは何人いるだろうか。

(ほとんど)居ない理由はこうだろう。

日本には少なくともアーリーステージの国内VCマネーは十分にあり、レイトステージは少ないものの早期上場できる資本市場があるので、外国人投資家が入って来て埋めるべき資金需給ギャップがあまり無い。

またそもそも、市場がマクロ・長期で伸びない、もっと言うと既に現在において世界市場に対する日本市場のシェアが数%しかない、その割に言語など参入障壁も高いので、外国のVCがわざわざ苦労してまで参入する動機も小さい。

だからどうした、それが良いとか悪いとか議論する暇があったら主体者となってその状況を利用してでも大事を成すべきではないか、そう思う人は特にリーダー層には多いだろうし、私自身どちらかといえばそう思う。

しかしなお、皆が漠として抱いているイライラがあり、どうもそれは無視できない。

そのイライラは一言でいえば、それでは我が祖国が縮小均衡に向かってしまうではないかという懸念だろう。懸念というよりはほぼ既定路線にすらなりつつある。
またそれがひいては、他人事ではなく自らのビジネスにも影響してくる/しているという不安だろう。

個々の経営者、投資家は、大なり小なりその命題に悶々としながら仕事をしていると思う。
それに対して簡単な答えはない。でも突破口はある。 諦めずにやり続けるしかない。

ちなみになぜ私はしょっちゅうアジア諸国でイベントに参加しているかといえば、呼ばれるから、というのが直接の答えなのだが、それは一言でいえば現地のコミュニティに属しているからである。属しているから呼ばれるのであり、帰属しているコミュニティには貢献するのが当たり前であると思って参加している。

逆に、現地に住んでいるのにその業界のコミュニティには実際のところ属していない、という日本人は少なくないように思う。それでは長期出張と対して変わらないし現地で本当の意味で仕事は出来ない。人様の事で余計な事だがたいそう勿体ないと思う。