ビルゲイツが高校で初めてコンピュータに出会い最初に熱中したのはゲーム開発だった。
というより、ゲイツに限らずコンピュータ黎明期のハッカーたちは皆こぞってゲーム開発で腕を競った。
ジョブズがアップルを創業する前に勤めた会社もアタリというゲームスタジオで、ゲームデザインを担当した。

その後モバイルという新しいプラットフォームが出来てスマホシフト革命が起きたが、そこでも最初に栄えた産業はゲームだった。

昨今のVRブームにおいても当面はゲームがその市場を牽引するだろうし、事実ハードもソフトもプレステや任天堂は未だにVRの本命プレイヤでありOculusのソフトも今はほとんどゲーム系ばかりである。
10年前のVRブームでは、リンデンラボ社によるセカンドライフというゲームが社会的ブームを巻き起こした(その後実質破綻した)。

いつの時代もコンピュータの新しいプラットフォームでは最初にゲームが栄えてきた。
ビットの世界では人間が想像出来るあらゆる事が可能となる。その仮想世界で人々がまず最初にやりたくなるのがゲームなのだろう。
しかし、だからといってVRとはゲーム市場であると見るのは誤りだろう。PCでもスマホでも今回のVR・ARブームでもゲームは序の口であって本丸はあらゆる産業の効率化と発展である。医療や教育あらゆる製造業もサービス業も、VR・ARによってそれまでの発展カーブと角度の違う伸びを見せるだろう。(特にARの産業インパクトは大きい)
逆に言えば、VR・ARが当面ゲーム用途だけにとどまるようであれば、それは既存のゲーム産業の代替に過ぎず大きな発展は見込まれないだろう。

そもそも、「コンピュータとはVRである」とも言える。
例えばEコマースだってVRだ。リアル店舗では再現不可能な無限大の品ぞろえがバーチャルだからこそ可能だ。

ではコンピュータがもともとVRなら、今VRと言われているものの本質は何か?それは「入出力インタフェース革命」だろう。

PC、スマホ、タブレット、いずれもその出力インタフェースは2次元の小さな四角いスクリーンだった。それをより鮮明にする進化だった。それに対して今回のVR・AR革命ではヘッドマウントディスプレイをはじめとした不連続な出力デバイスの出現であり、これによって人間の視覚に限りなく近けようとする試みである。

入力に関しては、入力デバイスをなくす事がVR革命の本丸だろう。今はどのメーカーも何らかのコントローラーデバイスを用いているが、その後それほど長い時間をかけずに、それらのデバイスすら不要となり、人間の手や口からの直接入力に限りなく近い形になるだろう。

不連続なプラットフォームシフトは、膨大な用途開発ブームを起こす。

不動産と同じでデベロッパーが広大な敷地を開発すればその上にマンションやオフィスが立って人が集まり、その人たち向けに飲食店も学校も病院も道路も、あらゆるサービスや生活・職業インフラがどんどん作られる。

ゆえにプラットフォームシフトは新たなビジネス機会そのものである。ゆえに大手が挙って参戦している。

しかし不連続なプラットフォーム革命は、例外なく、思ったよりもかなり時間がかかるものである。

大方の読み通り、恐らくマス普及期はこの1-2年という短期では来ないだろう。

資金調達が容易でなくなった昨今のマクロ金融環境下では、スタートアップがこの「過度の期待の後の幻滅期」を3年以上の中期ないし長期で耐える事はほぼ不可能だろう。
FacebookやGoogleなどのメガ企業がプラットフォームを握るが、ミドルウェア以下コンテンツ以上、あるいは開発・分析ツールや3rdパーティーマーケットプレイスなど、スタートアップにもビジネスチャンスはあるだろう。しかしそこにおけるグッドポジションを獲得するのは、むしろ今は存在しない、数年後に参入してくるスタートアップではなかろうか。それはピーターティールが良く言う「企業価値が大きくなるのは常にラストムーバ―である」という法則にも通ずる。