【Blog】インドスタートアップ2021年上半期の主要イベントと今後の日本企業による事業連携可能性について
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弊社のインドネシア投資先であるBukalapakが8月にインドネシア初のテック企業として市場の高い期待を受け、一時36%を超える株価上昇を見せ、ASEANでも最大級のIPOで無事にデビューしました。同社の上場に関しては別の機会に触れたいと思います。
東南アジアだけでなく、インドにおいてもハイテク企業の急進が続いています。同国では毎月2~3社ユニコーン企業が誕生しており、既に60社超がユニコーン企業となりました。また、今年はインド国内市場、国立証券取引所(NSE)に初の本格ユニコーン企業として上場したゾマト社のIPOは初値に対して66%オーバーサブスクライブで大成功を収め、時価総額は$15.7B(約1.6兆円)に達しました。またインド最大のフィンテック企業であるPaytmや、保険商品比較サービスを提供する Policybazaar 、美容系 E コマースのNykaa 、物流大手の Delhivery 等*、ユニコーンによる国内 IPO が続く可能性があり、益々テック市場が活況の1年になると思われます。
*他にも下記の企業が今後、国内外IPO申請を検討しております。(下記、現地報道より筆者作成)
上記のイベントを支える背景には国内外資本・機関投資家によるリスクマネーが潤沢なこと、巨大化するスタートアップエコシステム側からの要請や、政府も利益水準等の上場基準を緩和した事等が挙げられます。2021年上半期の資金調達環境については、過去最大の614件の投資、総額$108億ドルと良好で特に、アメリカ老舗VCであるTiger Globalが21年上半期で総額$14億ドル、28社のスタートアップ企業に出資をしました。余談ですが、同社はリモートで現地の市場調査会社とFinancial Adviser を駆使して、現地に行かずに約2週間程度で出資実行しており、スピード感には非常に驚きです。
また、2021年上半期にはインド国内にとっても重要なイベントが起きました。それは、現地大手財閥タタ・グループがオンライングローサリーストア最大手のBigbasketとオンライン薬局の1mg社を立て続けに買収しました。このニュースは、これまで重厚長大だったタタ・グループが重い腰を上げて、DXに真剣に取り組むことを表明した大きな出来事となりました。日本でいうと、トヨタグループが楽天を買収するようなくらいインパクトのある出来事だと思います。
この記事で伝えたかったことは、インドスタートアップ企業に純・ストラテジックな投資を含め、投資環境が益々非常に厳しくなっていることです。上記のように、インドスタートアップマーケットには国内外・ソブリンファンド等の機関投資家などの投資家・事業会社が群雄割拠しています。一方でその投資の受け皿である起業家も非常に多く、スタートアップの数自体も既に9万社超存在します。需要供給を満たしているように見えますが、海外投資家はリモートで投資を実施することもあり、非常に投資企業選別のハードルが厳しくなっています。また、海外投資家はシンジゲート(投資家が他の国内外の投資家を連れてくることで大口投資が可能となり、かつ市場調査等も共同で行えるので非常に効率的)で投資を行うこともあり、良いスタートアップ企業に投資家が集まりほとんどオーバーサブスクライブとなっている印象があります。現に弊社の投資先でも、同じような現象が起きています。
これまでは日本企業も戦略的投資を行う際に$1ミリオンドル程度でシリーズA・B企業に資本業務提携等が受け入れられてきましたが、最近では、余程スタートアップ企業側にメリットがない限り、同水準の業務提携を行う場合は、倍以上の金額が要求されるように感じております。
少し耳が痛い事も記載しましたが、インドは医療・金融・教育・農業とレガシーな産業構造が色濃く残っており、そのためDXコンバージョン余地が大きく、DXにより創出される経済価値が大きいスタートアップ企業が日々勃興しております。また大気汚染や気候変動等の社会課題を解決するための脱炭素・気候変動対策をはじめとする社会問題解決型に取り組む新興国ならではのタイムマシンビジネスではない独自のビジネスモデルを持つスタートアップ企業が増えてきております。非常に投資妙味の高い国となっておりますので、ご興味持っていただけましたら幸いです。