2026 年頭所感

皆様の御陰様をもちまして今年も新年を迎える事が出来ました事、厚く御礼申し上げます。さてここに例年通り今年(を起点とするこの数年)において特にテクノロジー/スタートアップ界隈において起きるであろう10の予測を備忘録的にしたためる事をもって年頭所感と致します。

 

1. テクノロジー・スーパーサイクル

2026年の世界経済を一言であらわせと言われたらこの言葉が適切である、と今年の暮れくらいには議論しているだろう。世界の主要産業の実需と主要国の株価は今、AIと半導体を中心としたテクノロジーの首が折れるほどの発展速度によって押し上げられている。これは明確に2022年11月チャットGPTモーメントを起点としているが、そのスーパーサイクルの本格化がハイパースケーラーによる兆円単位のデータセンター投資競争が幕開けした昨年からであるが、それは今年においては更にエネルギー関連とインフラ関連、資源関連も巻き込みつつ、多少の調整はあれど大筋では継続するだろう。

 

2. IPOブームのピーク

一昨年から米国はIPOブームに入った。そしてそのピークとなるであろう今年のメイン・イベントは、スペースXあるいはOpenAIのいずれかまたは両方のIPOだろう。昨年の年頭所感では超人の時代、を論じ、その代表格としてイーロンマスクとサムアルトマンの名を挙げた。今年その2人の男が率いるそれぞれの会社は、おそらくいずれも1兆ドル前後の企業価値を付けて、人類史上最大金額のオファリングサイズで、今年の半ばから来年初頭のいずれかの時期に資本市場へとデビューするだろう。1兆ドルとはすなわち世界の上場企業ランキングトップ10圏内である。これまでの産業史において上場していきなりトップ10に躍り出るという事は異例である。(長年未上場であったサウジアラムコの上場という例外はあったものの)その時代の産業覇権を制する企業とは企業年齢のもっと初期において上場し、そこから時間をかけて上り詰めるものである。そうした前代未聞の会社を我々は少なくとも1社、おそらく2社、今年は目撃する事になる。そしてその事はこれからの数年の人類にとってかなり大きな、様々なインパクトを与える事となるだろう。

 

3. AIブームの調整

OpenAIの上場とは何を意味するか。その問いに対する答えはいくつかあるだろうがS-1 (上場時の目論見書)やその後の各種IRで財務情報や経営重要情報の詳細を開示する事によって、この間のAIブームにおける様々な憶測や誤解や希望的観測のうち少なくとも一部が誤り、悪ければ決定的なそれを含んでいた事が白日の下に曝き出されるかもしれない、という事を意味するとも言える。これによって一時的かある程度の期間かはともかく、幾ばくかの程度でもってAIブーム(局所的にはバブルと言っても差し支えない)に対して調整が入る可能性はあるだろう。無論その逆も起こり得る。同社の驚くべきマネタイズの速度と大きさについての報道が現実に立証されて人々が安心する可能性である。いずれにせよ2026年という年は人々は調整について「警戒しつつも上値を探る」というバブル期の常であるセンチメントを継続する事だろう。

 

4. Googleの復権

今年中に少なくとも1度は、世界時価総額ランキング1位の座をAlphabet社は奪取するだろう。またGeminiがChatGPTをトークン生成量において抜き去るだろう。

 

5. 大学入試における訴訟

米アイビーリーグや英ラッセルグループら世界トップレベルの大学のいずれかまたは複数において、入学試験のAI不正使用にまつわる訴訟が起きるだろう。具体的には入試科目のうち特にエッセー(作文、研究論文)をAIを駆使して書く受験生と学校との間で、許可された範囲のAI利用であるか否かを立証する法廷論争となるだろう。事実、既に世界の大学や高校で入試ではないがテスト評定等を巡って似たような訴訟は起きている。アカデミックのみならず司法試験はじめ各種士業の試験やもっと言えば資格制度そのものについて、更には人類の学習という行為全般に対する本格的なバージョンアップ、OSアップデートの少なくとも議論の契機となる年にはなるだろう。

 

6. エネルギー・ルネサンス

原子力発電の復権、いわゆる核ルネッサンスはAIトークン生成需要によって不連続に急加速する、特にデータセンター直結型の小型原子炉が爆発的に普及するだろう。原子力のみならず「ビハインド・ザ・メーター」つまりハイパースケーラーがグリッドを迂回する自前発電が普及する事で太陽光や風力のプライベートプラントが急増しクリーンテックが再び盛り上がるだろう。よってNextEra EnergyやBloom Energy等エネルギー関連の新興上場企業やサムアルトマンのOkloやビルゲイツ支援のテラパワーら未上場のエネルギー企業も時価総額は既に大きいが引き続きその傾向が続くだろう。

 

7. 家庭向けヒューマノイドの実売

遠隔操作ではない完全自律型の人型ロボットで簡単な家事を行う数百万円程度のヒューマノイドの販売、実用化が始まるだろう。実際にテスラがオプティマス第三世代を今年販売するとしている。遅れを予想する声が大きいがいずれにせよ今年は一部の富裕層等に限定的に導入されるものの、ロボットが実際の家庭で家事をする姿がインフルエンサーによってSNSでばら撒かれる事で話題をさらうだろう。なお工場、倉庫物流等では、史上初の数万台単位の量産受注が決定し、2026年はヒューマノイド元年と称されるだろう。

 

8. AI CXOブーム

特にスタートアップ界隈において、人間に替わって自律型AIエージェントがCFOに就任し、予算編成・与信・発注を人の承認なしで実行したり社内規定を作る、あるいはGithub CoPilotやCursolを駆使した無人CTO、といったニュースを振りまいて衆目を集めんとする行為が一部で流行るだろう。

 

9. 一人ユニコーンの誕生

人間ひとり、AIエージェント1,000体等で構成されるスタートアップでユニコーンに到達する最初の会社が誕生するだろう。

 

10. スタートアップ格差の完全定着

今年も昨年までと同様に、日本も米国も含めたほとんどの国においてスタートアップによる資金調達は、金額は増え、件数は減るだろう。アメリカは上位数社、日本は数十社による資金調達が全体の半分以上を占めるだろう。上位案件はほとんどまたは全てがAIを含めたディープテックとなるだろう。