1兆円企業を2社作る男、ジャック・ドーシーがその秘訣を語る

Twitterは、1.8兆円の時価総額を付けてIPOする事が決まっている。

Squareは、来年(といってもあと1か月ちょっとで今年は終わるが)のIPOに向けて、リーグテーブルの常連、ゴールドマンサクスやモルガンスタンレーなどの主幹事証券会社候補と協議に入ったと報じられている

既に粗利で100億円、決済総額で2兆円を有するとの事であるから、おそらく実現すれば1兆円規模のIPOになると見るのが妥当だろう。

その2社を作った男こそ、ジャック・ドーシーだ。

“Next Jobs”などともいわれ、その経済的な成功のみならず個性的な言動で知られるドーシーだが、彼が先月、世界最高峰のシードアクセラレーターY-Combinatorが主催するカンファレンス「Startup School」に登壇した。

有難いことにドーシー以外も含めそのほぼすべてのスピーチがYoutubeにアップされた

いずれも珠玉の内容であるが、とりわけドーシーは、彼らしい独特のコンテンツで素晴らしい内容だったと思う。

なんと彼は、彼がインスパイアされた本を「朗読する」という形で、スピーチを始めたのだ。しかも「ペーペーバックを売っている本屋が見つからなかったから」といって、モバイルをポケットからもぞもぞと取り出して、読み始めた。

そのうちの一冊が、ロバートヘンライというアメリカの画家が描いた The Art Spirit だ。

ヘンライは、米国のポップカルチャー系アーティストに人気がある、知る人ぞ知る画家であり思想家だ。

この本から気に入った一節を朗読しては、それに対して若いスタートアップに重要な視点についてドーシーが解説を加える、といった形式のスピーチだ。

全文は是非Youtubeをトライしていただきたいが、その中で特に私が改めて感じ入ったパートは以下だ。

I believe great artist in the future will use fewer words, copy fewer things, essays will be shorter in words, longer in meaning.
We must paint only what important to us, must not respond outside demands.
They do not know what they want, or what we have to give.

私が思うに、未来の芸術家はより少ない言葉で語り、模倣も少なくなるだろう。エッセーは短い言葉で、しかしながら多くの意味が含まれるようになるだろう。

私たちは、自分自身にとってのみ重要な事を描く必要があるのだ。外野が欲している事に反応してはいけない。

彼らは自分が何を欲しているかわからないし、したがって私たちが与えるべきものも、わからないのだから。

ドーシーはこの、ロバートヘンライの一節を音読したうえで、次のように、解説を加えた。

The most important thing is you have a passon to build for yourself .

重要な事は、自分自身の為に作るという情熱を持っているという事だ。

ジャックドーシーが当世稀有な才能であり起業家である事は、冒頭の通り1社でも驚異的な1兆円企業を数年の間に2社も作ってしまっているところから議論の余地はないだろう。

その神髄がどこにあるのか、その秘訣が垣間見られるスピーチではなかろうか。

スタートアップの世界では、皆口をそろえてこう言う。

「問題を探せ、人々が困っている問題に対する解を見つけろ」

ドーシーの言葉は、このスタートアップの定説と、一見すると矛盾するともとられかねない。

しかしながら、それは途轍もなく重要な視点であり、真実であると、私は思った。

車や音楽プレイヤーのようなハードウェアのメーカーもそうだし、インターネット・サービスでもそうなのだが、成功しているものはたった一人の情熱が作り出している場合が多い。

誰に聞くでもなく、A/Bテストすら時にはぶっちぎり、「こうじゃなきゃダメだ」 「オレはこういうプロダクトが見たいんだ」 という姿勢で作る。

それは起業家というよりは、もはやアーティストに近い。

ドーシーは言う。

ここにいる皆さんは、「自分がこの世で見たいと思ったものを、他の人達も見たいと思っているに違いない」 という可能性に賭けている事だろう。その賭けに勝つことも、負ける事もある。

しかし重要なのは、自分自身の為に作るという情熱なのだ。

そのようなものこそ、他者を動かし、自らも報われるのだから

皆さんはどう思うだろうか。