シード期の大型資金調達は間違っている
·
米国のトップベンチャーキャピタリスト、マークアンドリーセンとフレッドウィルソンが昨今のスタートアップの資金調達が大型化している風潮について、Twitterで絡み合っていた。
@pmarca I assume Seed is to build product and get to PMF, Srs A is to build business, Srs B is to scale business
? Fred Wilson (@fredwilson) 2014, 6月 14
これをうけてフレッドがごく簡単に「ファンドレイズはかくあるべき」という持論をブログにまとめている。
資金調達の教科書的セオリーとして誰でもわかる平易な内容にまとまっているので、意訳してみた。
同じような状況にある日本のスタートアップ関係者におかれても、一読のうえちょっと立ち止まって考えてみる、良い機会ではないだろうか。
————– What Seed Financing Is For ————-
私は、シード投資が昨今世間で行われているほどに大きい金額であるべきではないと強く思っている。
またシード投資により調達された資金は、プロダクトを創る事と、そのプロダクトの市場接点(Market fit、市場性の事)を模索する事、それ以外の何ものにも使われるべきでは無いと、強く思っている。
それをやってなお、お釣りがくるほどの大規模なシード投資を獲得すことは、不可能ではないかもしれない。
そして昨今では起業家は皆、自分が許容できるダイリューション(自分の持株比率の低下)の範囲で、可能な限りたくさんの資金を得るのが良いという風潮にさらされ、また彼ら自身もそうしたいと思うようになっている。
しかし私は古いタイプの人間だ。
私はスタートアップをつくる事やファンドレイズは、階段を上るようなものだと思っている。
私のパートナーのひとりのアルバートは、よくビデオゲーム(レベルアップ系のやつ)の喩えを好んで使う。まあどちらでもいいが私は階段の喩えを使ってみよう。
第1のステップ(Step to climb:上るべき階段)は、プロダクトを創る事だ。それを市場に出して、プロダクトのマーケットフィットを模索する事。それがシード出資金の使途となるべきだ。
第2のステップは、第1ステップにおいて実証されたマーケットフィットによって生み出されたところの「事業」を運営して伸ばしていくための、小さいチームを雇う事だ。それがシリーズAの資金使途である。
第3のステップは、そのチームを拡大して、売上カーブを傾斜させ、市場を獲得する事だ。それがシリーズBの資金使途たるべき。
第4のステップ。それは収益化である。必要な支出をおこなっても残るキャッシュフローによって事業を継続・拡大する事が可能となる。 そのための資金がシリーズCだ。
第5ステップ。 それは流動化(エグジット)である。それはあなたにとって、あなたのチームにとって、そしてあなたのインベスターにとっての流動化である。 それがIPOであり、上場後の公募増資である。
上記はごく単純化した話だ。
実際はこの階段の各ステップを、簡単に、パーフェクトに登り切る会社はごく一握りであり、時には悪い事も起きるものだ(Shit happens)。しかし我々皆が知っている通り、その程度の悪い事はなんとか乗り越えられるものだ。
ともかく、私が過去何年にも渡って関わってきた出資先スタートアップのなかで良い成果を収めた会社は全て、多かれ少なかれ上記のような階段を順番に上ってきたのだ、という事は言っておきたい。
私は、この階段の最初の3つをすっ飛ばして4段目に足を踏み込むべきではないと思っている。たとえそうできる足(ファンド)があるにせよ、だ。
それはリスキーだ。
もしその段に正しく着地できなかったら、あなたは滑って転んでしまうだろう。そしてその場合、立ち直るのは難しいものだ。
フレッドウィルソン 2014年6月18日