インド、コロナのいまと今後の見通し

日本にとって経済的、地政学的に極めて重要な国インドが今、コロナ被害によって厳しい試練に直面しています。多数報道もなされていますが、ここで現時点のファクトをまとめます。

インドのコロナ被害状況とは

一日の検査陽性判明者数がとうとう40万人台に達しました。これは今年1月にピークを迎えたアメリカの1.3倍程、人口当たりでは0.3倍程(インドのほうが7割低い)という数字です(※両国それぞれの感染ピーク日比較)。死者については首都ニューデリーで医療崩壊が発生した事もあり一日死者は3千人台と極めて厳しい状況にありますが、インドではもとより平時の死者数すら正確に測定し難い状況にあるため、超過死亡を用いての比較さえ難しく数値は不確かです。

感染者数もまた政府公表数値より実際はずっと多いであろう事はメディア、専門家、現地市井の人々の大半から疑義の声が上がっていますが、これ一方で他により信頼置けるソースも無いのが実情です。

 

ワクチンの状況は

5月1日より、政府は18歳以上全ての国民をワクチン接種対象とすると発表しました
また既にインドは1.44億本接種済みと米中に次ぐ世界3位の接種回数、人口当たりでも約10%と主要国上位です。そもそもインドは世界最大のワクチン生産国で世界で販売されている(コロナ以外含む)すべてのワクチンの60%以上を生産しています。COVAX(コバックス)とは主に先進国の資金拠出で新興国に無償コロナワクチンを供給するWHO主導の枠組みですが今年コバックスが供給する予定のワクチンの大半はインドで生産される予定です。しかし目下の国内感染状況により3月末にインドはワクチンを禁輸とし自国に優先的に振り当てる措置を実施しています。

なおインドで蔓延する変異種に対するワクチン効果の懸念報道もあったものの、ファイザーの共同開発者ビオンテックのシャヒン創業者CEOは「インドで広がっている新型コロナ変異株にも、同ワクチンが効果を発揮することに自信がある。30種以上の変異株を調べたが、ほぼ全てでワクチンは同じように効く」と述べました。
ただいずれにせよこの短期の感染急増による混乱もあり、ワクチンが十分に行き渡るにはある程度時間がかかるため、その間はソーシャルディスタンシングにより凌ぐより他はないと考えられています。実際インドはいま厳格なロックダウン期間中にあります。

 

いつ収束するのか

主な研究では今回の第2派の収束見通しにつき、米国ワシントン大学の保健指標評価研究所の数理予測モデルによると死者数のピークは来月5月16日とされています。インド工科大の科学者グループの研究結果でも5月14日~18日に日次44万人程度の感染者でピークオフすると予測されています。

 

これをどう受け止めるか、これからどうするか

極めて厳しい状況にある事は確かであり各国からの迅速な支援も必須です。がしかし、つい3-4か月前までインドと同様または準ずる程度の医療崩壊状態にあったアメリカあるいは欧州のいくつかの国々が今では急速に収束方向にあり経済・社会活動も正常化に向けて歩んでいます。また昨年第1波当時とは異なりデリバリーの遅速はあれど人類は今はワクチンを手にしています。

当面はインド各地で厳格なロックダウンが実施されておりこれにより既述の通り来月半ばには足元の峠は越え、その後何度か波が寄せては返しを繰り返しつつもその間にワクチン接種が進むことで、インドが早晩この試練を克服し同国の社会経済活動が正常化すると考えられます。

その一方で、何事もそうではありますが殊コロナに関連しては遠い他国の対岸の火事とみなすわけにはいきません。既にインド変異種は日本、アメリカ、イギリス、シンガポールら17ヵ国以上で発見されており、それが理由かは未明であるもののシンガポールでこの9か月間毎日ゼロないし一桁更新だった日次国内感染者数が先日急に16名と跳ね上がり現地では衝撃が走っています。

 

募金

最後に、募金について。いま現場で最も必要とされているのが酸素です。現地の複数のベンチャーキャピタリストやユニコーン企業経営者らが立ち上げた非営利社会インパクト組織、ACTでは、酸素濃縮器を必要とされる医療機関に直接配送するプロジェクト等にスタートアップならではのスピード感とエクセキューション能力をもって高い成果を上げています。短期的に実効性の高い支援募金をご検討の際は現地にて信頼評価の高い同団体を検討されてみてはいかがでしょうか。弊社でも微力ながら募金いたしました。

世界全ての国が協調と相互連携でこの長い戦いに打ち克つ日が一日も早く来ることを願っています。