英国EU離脱と宇宙とAI

 

英国のEU離脱(Brexit)は、今世界全体が抱える不都合な2つの真実を浮き彫りにしたと思う。

一つに、グローバル化の逆流
二つに、中間層のドン詰り

である。

グローバル化はこの半世紀ほど人類にとっての金科玉条だった。それが人々の成長や幸福を約束すると誰もが信じていた。しかし実のところ、それによる恩恵には大多数の人々は与らない、それどころかより迷惑や不利益を被るという、不都合な真実が判明しつつある。
グローバル化は極少数上位の個人と企業を富ませるが、それ以外にトリクルダウンするなぞ幻想だったと皆が思い始めている。事実GDPや労働人口の7-8割はローカル経済である事は確かだ。「グローカル」など造語まで作ってグローバル化が国家全体を救うと謳った事が誤りだったと人々が考え始めた。

中間層は、その「グローバル化のまやかし」、「いつまでも食べることができない飴と次々に降りかかるムチ」に対して、我慢の限界に達しつつある。

それが今回の投票結果であり、ドイツやフランスで極右政党が人気化しているのも、トランプが大マジメに米国大統領になり得る状況も、根本原因は同じだ

尤もそれらはまるでテロのようなもので、最終勝利など無い事が最初から決まっている戦いでもある。

中間層やローカル経済の反グローバル化傾向は今後更に進むだろうが、それによって彼らの状況がベターになるかといえば、そういう事はないだろう。グローバル化しても、しなくても、状況は良くはならない。それでも人々は現状に我慢ならずに、破れかぶれの反撃に出ざるを得ない。それくらいにっちもさっちもいかない、ドン詰まりの状況に、世界中の中間層が置かれている。

ではその本質は何か?
格差だろう。

半世紀くらい前まで、しきりと「南北格差」という言葉が使われていた。先進国と新興国との格差の事である。それがこの半世紀のグローバル化で、アービトラージを取りまくる事によって、グローバル間の格差はほぼ無くなってしまった。
インドのデリーやインドネシアのジャカルタと東京との格差より、東京と日本の地方山間部との差のほうがはるかに大きくなった。
ゆえに英国でもロンドンは残留、地方は離脱となるのである。

アフリカの貧しい人が遠い米国の豊かな人をうらやむよりも、同じ国に住む、同じ顔つきをした同じ言葉をしゃべるご近所さんを妬み嫉む気持ちのほうが百倍強いのが人情というものだろう。

この半世紀で世界がそうなってしまった。ジオグラフィカルな富の偏在の時代が終わり、デモグラフィカルなそれへと世界が変わった。

国家間の格差の時代から、米国内の、英国内の、日本人同士の格差の時代、人々の分断の時代となってしまった。

しかも、この格差はとてつもなく大きく、強い。相続もすれば遺伝すらする。格差が自律的拡大再生産をしてしまう。

ゆえに一個人の努力ではそう簡単にその差は埋まらない。

だから切羽詰まって、今回の英国投票結果のような、破れかぶれの行動に出るしかなくなってしまう。

この格差問題を、人類がどう平定して再び安定的繁栄を築けるかが、人類の目下最大のチャレンジだろう。

私はベンチャーキャピタルというオプティミスティックな職業に就いているものとして、その問題の解決に革新的な起業家やテクノロジーが少なくとも部分的に貢献する事があると信じている。

例えば宇宙というフロンティアが人々の希望になるかもしれない。 AIやロボットにより職が奪われると嘆く向きもあるが、それらにより飛躍的に生産性が上がった結果、人類全員が経済的不安を抱えることが無くなりつつがなく生活できる世界が来るかもしれない。

ともかくも、何らかの希望、誰もが共通に、わかりやすく抱くことができる希望、その発明が人類の急務なのだろう。