2017 年頭所感

新年あけましておめでとうございます。
本年も皆様のおかげ様をもちまして迎えることができました。

毎年、元旦の日経新聞一面見出しに注目しておられる方も多い事と思いますが、今年のそれは、
「当たり前」 もうない 逆境を成長の起点に
でした。

また、NewsPicksが今年の元旦に満を持して提示したのは

「日本3.0」、2020年頃日本でガラガラポン革命が起きる
です。

これらいずれにも共通して考えさせられた点が、時間軸です。常々意識しておりますが、殊に2017年はこの「時間軸」をキーワードとして意識していきたいと思います。

「当たり前はもうない」
確かにそのとおりです。しかし「ニューノーマル」という言葉が生まれ「これからは異常が常態化する」という認識が広まったのはちょうど10年前、リーマンショック前後の2007年でした。

「2020年頃に日本にガラガラポン革命が起きる」についても、個別の論には賛成する点も多いですが、革命とは何か突然起きるパラダイムシフトのように聞こえるものの、実際はそれに連なる何十年にも渡たる社会背景こそが本質であり、革命はそれにだめを押す象徴的な一つか二つの出来事とも言えましょう。

例えば明治維新に繋がる主因の一つである外圧、黒船来航は1853年でしたが、そこから戊申、西南戦争を経て本丸の近代的内閣政治が発足する1885年までは実に30年以上かかっています。

太平洋戦争も、満州事変の1931年から終戦の45年までは14年ですが、それ以前の欧米列強とのアジア分割統治が1800年代終わりころからずっと燻って大戦に繋がっています。

ブレグジットとトランプは昨年の大変象徴的な二大事件でした。しかしその主因たる新興国の勃興による先進国中間層の相対的な没落は、既に90年代後半あたりから始まっており20年越しでいよいよ彼らの不満が沸点に達しマグマが表出した結果と言えるでしょう。そう考えるとトランプすら余震であり本震はこれから起きるのでしょう。

では2020年日本ガラガラポンが仮にあるとして、それに連なる起源はどこにあるのでしょうか。
それは「失われた20年」 に他ならないでしょう。
1991年に始まったとされるそれは今年で26年目、2020年には30年経つことになります。
明治維新、太平洋戦争、米国グローバリズムの勃興から終焉などなど、30年一区切り、というのはある程度納得感のある時間軸であろうと思います。

もう一つ重要な点。

あらゆる国の、あらゆる歴史的エポックは国際関係から生じているという点です。もっと言えば国内要因よりむしろ国外要因のようが大きいとすら言えるでしょう。

既述の通り、明治維新は外圧、大戦は列強との植民地闘争、ブレグジットとトランプは新興国との労働競争が根本原因でした。

日本3.0を論じる際に最も重要な係数は、いまグローバルで何が最も重要なイシューであるかの見極め、それに他なりません。

そしてそれはずばり、アジアアシフト、特にチャイナシフト、です。

経済、政治、軍事、ITの全てにおいて、冷戦後30年ほどにわたりアメリカ一強時代、パクスアメリカーナが続いていました。そして今それが終わり、2017年は完全に中国が米国に並び世界のヘゲモニー闘争が始まる年となります。これから国際戦争が起きるとするならばそれはサイバー戦争ですが、目下人類最大の産業であるIT産業においても中国は米国に完全に比肩しています。

過去の歴史から学ぶならば、日本という国・国民の在り方が大きく変容するとすればアジアシフトに最も影響を受けるという事になります。

ゆえに日本はアジアを学び、取り組まなければならないのです。

中国のみならず「次の大国」たるインドなども含めて、西洋的世界から非西洋がマジョリティでありルールとなる社会がもう始まったのです。

以上が私の年頭所感です。
「何かとんでもないことが起きる」という「何か」を予想するのではなく、その「何か」に連なる過去数十年にわたって起きている潮流、言うなれば「既に起きている未来」をあぶり出し、それを言語化して認識し、そしてそれに対処すること、これこそがあるべき態度だと考えます。
それに関連して、私が仕事の舞台としているシンガポールのリーシェンロン首相の年始挨拶が象徴的でした。

「世の中はUncertain(不確実)だ。しかし私たちはCope(対処)できる。」

どんなに不確実に見える世の中でも、人間が作っている世の中である限り、その潮流を見極めて対処することは可能なのです。

本年も世の中の潮流を「時間軸」をしっかりと見極め、「アジア」を舞台に仕事に邁進してまいる所存です。
本年も皆様のご健康とご健勝をお祈り申し上げます。

2017年 元旦