さようならAI、こんにちはAAI
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平成という元号が変わるかもしれないというニュースが国中を駆け巡る今日、テクノロジーの世界における元号もそろそろ変わってきそうだ。
私が社会人デビューした94年は、
このインターネット前と後で世の中は一変した。これを伊藤穣一はBI/AI、Before Internet / After Internetと評した。
インターネットを社会人一年生で知ってしまった私は、それを知らない、
しかしそれ故に、私たちおよび私たちより若い世代は、インターネットという武器をフル活用して旧世代がつくった世界の少なくともその一部を、文字通りDisrupti
さてそこから20年たった。
つまり今の20代の若手社会人達は、
対してBI時代は会議資料は全て手書きだった。それを前日までに一般職女子社員に託し彼女らが人数分を半日かけて大量コピーし配布して、会議が終わったらシュレッダーにかけた。原本のみDropBoxでもGoogleDocsでもなくリアルに巨大な資料室に保管された。顧客への連絡はメール一本ではなく、
こういうBI時代の行動様式は、今の30歳以下のAI世代の目には刀ちょんまげほどに前時代的に映ることだろう。
それがBI(ビフォーインターネット)とAI(
さてそのAI時代も既に20年が過ぎ、大きな踊り場、曲がり角に差し掛かっている。
既述の通り元来インターネットは若者による産業だった。
しかし学生起業家だったジェリーヤンも白髪に、ネットスケープ生みの親たる
ペイジも43、
この間彼らの作った会社はあれよあれよと世界を寡占化し、各社10兆円単位の、
インターネット産業を担ってきた若者が中高年となり、あるいは引退して世代替わりした。
産業として寡占化が進み、寡占企業の時価総額は他のどの産業よりも大きくなった。
つまり、インターネットは産業としての成熟期を迎えつつあるという事だ。
AI時代に入って20年、たったの2ディケイドで、である。
さてそこで問題は、次の20年がどうなるか?という事だ。
インターネット産業の成熟と呼応するかの如く、このところ急激に新たなテクノロジーが発展してきた。
AIがその代表格であるが、のみならずロボティクス、次世代自動車、再生エネルギー、バイオメディックス、VR/ARなどのヘビー・テックの実用化がこのところ急速に進んできた。
シンギュラリティ、つまりAIが人間の脳みそより賢くなるのは20年後という説を信じる向きも多い。
DeepMind社のAlphaGoというニューラルネットワークを応用した深層学習アルゴリズムが世界囲碁チャンピオン韓国人イ・セドルに始めて勝利したのが今年2016年である。ディープラーニングが実用化してAIが人間を少なくとも囲碁という複雑なゲームにおいて勝った今年がAIの紀元年だと仮にすれば、今年からAAI(After AI)がスタートするというメタファーを使っても良いのかも知れない。もちろん「AI」の部分は他のニュー・テックに読み替えてよい。あくまでメタファーである。
インターネット産業が成熟化し、つまりAI(After Internet)時代が終わりかけ
それと同時にAAI(After AI)時代が幕を開けようとしている。それが私たちが今生きている今日2016年である。
AAI時代の全盛期、つまり今おぎゃあと誕生した子が20年後に社会人として働きはじめる世界は、一体どうなっているだろう?
「え?車を人間が運転してたんですか?危ないじゃないですか」
と言っているだろうか。
「コンピュータにキーボードなるものがくっついてたんですねー、使い辛そう」
などと言っているのか。
極端に聞こえるかも知れないが、ネットはおろかパソコンも携帯も無かったBI時代に、今のAI時代を想像だにし得なか
「我々は常に今後2年間で起きる変化を過大評価し、
AI時代がそうだったように、AAI時代も若者の世代となるのだろうか。あるいはAI時代の覇者がグレイヘアーのベテランとなっても更に強大化して新パラダイムも引き続き牛耳る世界となっているのだろうか。それは今のところ両者入り乱れている。
そんな時代、今まさに起業しようという若い人はどうすべきか?
まず重要な事は、寡占・成熟時代に突入したインターネット産業において、AI世代の武器を使ってAI世代の勝者や資本家と戦う事は、過去の10-20年前よりもはるかに勝算が低く、期待収益率が小さくなってしまったという事実だ。その不都合な真実は直視したほうが良い。
次に、では誰も使い方を知らない新しい武器で、誰も勝ち方・ルールを知らないAAIパラダイムに身を投じるべきか否か。それは月並みであはあるがよくよくタイミングの見極めが重要という事だ。
既述のゲイツの言の通り、新しい物事は思ったよりも時間がかかるが、気づいたらコモディティ化が終わっている、そういう代物である。
あるいはピーター・ティールもいう通り 「極めて直観と反するわけだが、本当に企業価値がある会社というものは”ラストムーバ―”」なのである。
一つ言えるのは、「持てる者」は新しい武器、新しいパラダイムに弱く、失うものがなく柔軟性や学習能力が高く少々失敗してもすぐにリトライできる若者やチャレンジャーには圧倒的に有利だという、古今東西の普遍的事実である。